ネイティブカナディアンとの一日
2007.10.08 Monday
「物静かなワート」
バンクーバから北に約200キロ位の所にMt.Currieインディアンリザーブがある。スキーリゾートで有名なウィスラーから約一時間ほどの距離の村だ。ある取材をとおしてこの村の青年たちと知り合ったのだが、彼らはネイティブの誇りを守ろうと闘う若者たちだった。村には世界中から彼らを支援する人々が訪れ、一緒に暮らしたり議論をしたりしていた。彼らの話では、ボブ・マーリィが逃避行をしている時に、この村に1ヶ月程隠れていたこともあるようだ。ネイティブの権利回復を訴えて、カナダ政府と対立している過激な活動で知られた村でもあったのだ。
ぼくは彼らの村に行く度にアルビン・ネルソンに世話になっていた。夜になると毎晩誰かがビールを目当てに遊びにくる。そんなネイティブたちの中にワートがいた。みんな酔っぱらって話が盛り上がっていても、ワートだけは静かに微笑んでいるような青年だ。シャイで無口な青年と僕は思っていたのだが、ある日バンクーバーに戻るなら僕を乗せて行ってくれと頼まれた。もちろんOKしたのだが、このワートとのドライブで、僕はネイティブたちの自然に対する観察力に驚かされた。
ワートは僕が運転しているとしきりに話しかけてきた。無口な青年だと思っていたのでびっくりしたが、その内容がほとんど動物に関することなのだ。大きな木のてっぺんに鷲の巣が見えるとか、あの谷はグリズリーがいるだとか、あの木の穴には木の実が貯蔵されているのがわかるなど、でもぼくには彼が説明しながら指し示す方を見てもチンプンカンプンで、残念ながらただの風景にしか見えなかった。見えている物が違うのだ。しかし、バンクーバーまでの2時間はあっという間に過ぎる程楽しいものだった。
バンクーバーのどこまで送ればよいかと尋ねたところ、「結婚したんだ」と恥ずかしそうに答えたので、「ワート、おめでとう」というと「彼女は日本人なんだ」という。それならということで、バンクーバー郊外の自宅まで送って行ったら、ワートがお礼にといってグリズリーの牙をくれた。パワーを象徴するお守りだから常に身に付けておいた方が良いとのこと。シャイな青年だと思っていたが、決める所はしっかり決めるらしい。頑張れワート。
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