江成常夫さんの写真集「鬼哭の島」が届きました。
2012.01.28 Saturday
「鬼哭の島(朝日新聞出版刊)」
沖縄取材から帰ったら
知人の編集者から江成常夫さんの写真集が
届けられていた。
戦争が引き起こした悲哀の風景を問い続けてきた
江成常夫さんの新しい写真集である。
開いてみると、太平洋の島々にいまなお残る戦争の傷跡が、
ゆっくり南の島の風景に溶け込み始めているところを
正面からかちっとカメラに収めている作品が、
いかにも硬派の江成さんらしい写真といえる。
前書きに、「日本人は死者を弔う心を忘れ、
経済に走り飽食に甘えてきた」とある。
ぼくにとって耳に痛い言葉であるが、
全くそのとおりであろう。
写真は氏が体力に不安を覚えながら2004年から
各地を6年かけて巡り歩いたものをまとめた作品とのこと。
本書によればまだ島々には100万柱もの遺骨が
成仏出来ずに眠っているという。
タイトル「鬼哭の島」は
日本軍部の無謀な作戦で帰らぬ人となった死者たちの
聞こえぬすすり泣きを現している。
いつも南の島特有のハイコントラストの風景には
それだけ深い闇が潜んでいるのを感じさせられる。
もちろん沖縄もそうだ。
本書にも沖縄の風景が納められている。
表紙の写真はその沖縄で撮られたものである。
観光客でにぎわう沖縄の観光地だって
足元を見れば写真の風景が残っているのだ。
声に出さないだけで、
ウチナンチュはまだ忘れていない。
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